冷酷な騎士団長が手放してくれません
キスの手ほどき
◇
初夏を過ぎ、緑に溢れたリルべに、いよいよ本格的な夏が来た。
日差しに構わず外に出たがるソフィアに、アーニャはいつも愚痴をこぼしていた。
「ソフィア様、日焼けは美容の天敵です。夏の間は、外出をお控えしてください。それか、せめて万全に対策をされてからお出になられてください」
アーニャがうるさいので、ソフィアはしぶしぶ日傘を手にして出かけるようにしている。
リルべの夏は、美しい。
青々と生い茂った広野は青空に映え、蝶やトンボが優雅に飛び交う。太陽の光を受けて黄金色に光る湖には、真っ白な水連が花開き水面を漂っている。
世界がこんなに輝いているのに、ソフィアは邸の中でじっとしていることなど出来なかった。
幼い頃から毎年そうしているように、時にはリアムを誘い夏の日差しの中を一緒に歩いた。
そんなソフィアに、母のマリアはしびれを切らしていた。
ニール王子から婚約の申し入れがあって数日が経つが、ソフィアがいまだ返事をしようとしないからだ。
ソフィアにしろ、このままでは良くないのは知っている。
カダール公国の王子を待たすことが失礼なことも、これ以上の良縁などもうないであろうことも分かっている。
ただどうしても、気の迷いからはっきりとは決断が下せずにいた。
だが、婚約の返事を出し渋って一週間目のある夕方、事態は急展開を迎える。
初夏を過ぎ、緑に溢れたリルべに、いよいよ本格的な夏が来た。
日差しに構わず外に出たがるソフィアに、アーニャはいつも愚痴をこぼしていた。
「ソフィア様、日焼けは美容の天敵です。夏の間は、外出をお控えしてください。それか、せめて万全に対策をされてからお出になられてください」
アーニャがうるさいので、ソフィアはしぶしぶ日傘を手にして出かけるようにしている。
リルべの夏は、美しい。
青々と生い茂った広野は青空に映え、蝶やトンボが優雅に飛び交う。太陽の光を受けて黄金色に光る湖には、真っ白な水連が花開き水面を漂っている。
世界がこんなに輝いているのに、ソフィアは邸の中でじっとしていることなど出来なかった。
幼い頃から毎年そうしているように、時にはリアムを誘い夏の日差しの中を一緒に歩いた。
そんなソフィアに、母のマリアはしびれを切らしていた。
ニール王子から婚約の申し入れがあって数日が経つが、ソフィアがいまだ返事をしようとしないからだ。
ソフィアにしろ、このままでは良くないのは知っている。
カダール公国の王子を待たすことが失礼なことも、これ以上の良縁などもうないであろうことも分かっている。
ただどうしても、気の迷いからはっきりとは決断が下せずにいた。
だが、婚約の返事を出し渋って一週間目のある夕方、事態は急展開を迎える。