冷酷な騎士団長が手放してくれません
夏の暑い日差しの中を馬車は走り続け、カダール公国の要塞城に辿り着いたのは、夕刻になってからだった。
鉄製の門扉を抜けた先にある馬車着き場には、ニール王子自らが従者を連れて出迎えに来ていた。
馬車から降りるソフィアの手を取り、エスコートするニール。
「ソフィア。会いたかった」
視線が合うと妖艶な笑みと共に呟かれ、恥ずかしさにソフィアは頬を染めた。
「この者はアダムだ。以前、アンザム邸の晩餐会で面識があるだろう。私の従者で、片腕のような存在だ。時には、宰相のような役割も任せている」
中年の男が、帽子を取り頭を垂れた。白髪交じりの顎髭を生やした、目の据わった男だった。ニールの片腕なだけあって、頭が切れそうだ。
「よろしくお願いいたします、次期公爵夫人様」
「こちらこそよろしく、アダム」
アダムの言葉にソフィアはたじろいだが、どうにか返事をする。
「私も、護衛を一人連れて参りました」
ソフィアが振り返れば、リアムが姿を現す。粛々と頭を垂れるリアムを、ニールが食い入るように見つめていた。
「君は、確か騎士団長だと伺ったが」
「辞めて参りました。今は、ソフィア様の護衛に過ぎません」
鋭さを秘めた、リアムの眼光。ニールはしばらく気圧されたようにリアムの動向を見守っていたが、やがて彼特有の余裕に満ちた笑みを浮かべた。
「そうか。それは、我が国にとっても心強い。確か、リアムと言ったな」
「はい」
「ソフィアの護衛を務める傍ら、うちの小隊にも顔を出してくれないか? ちょうど剣術を教える者が辞めたばかりで、代わりを探していたんだ」
「かしこまりました。そのようにいたします」
鉄製の門扉を抜けた先にある馬車着き場には、ニール王子自らが従者を連れて出迎えに来ていた。
馬車から降りるソフィアの手を取り、エスコートするニール。
「ソフィア。会いたかった」
視線が合うと妖艶な笑みと共に呟かれ、恥ずかしさにソフィアは頬を染めた。
「この者はアダムだ。以前、アンザム邸の晩餐会で面識があるだろう。私の従者で、片腕のような存在だ。時には、宰相のような役割も任せている」
中年の男が、帽子を取り頭を垂れた。白髪交じりの顎髭を生やした、目の据わった男だった。ニールの片腕なだけあって、頭が切れそうだ。
「よろしくお願いいたします、次期公爵夫人様」
「こちらこそよろしく、アダム」
アダムの言葉にソフィアはたじろいだが、どうにか返事をする。
「私も、護衛を一人連れて参りました」
ソフィアが振り返れば、リアムが姿を現す。粛々と頭を垂れるリアムを、ニールが食い入るように見つめていた。
「君は、確か騎士団長だと伺ったが」
「辞めて参りました。今は、ソフィア様の護衛に過ぎません」
鋭さを秘めた、リアムの眼光。ニールはしばらく気圧されたようにリアムの動向を見守っていたが、やがて彼特有の余裕に満ちた笑みを浮かべた。
「そうか。それは、我が国にとっても心強い。確か、リアムと言ったな」
「はい」
「ソフィアの護衛を務める傍ら、うちの小隊にも顔を出してくれないか? ちょうど剣術を教える者が辞めたばかりで、代わりを探していたんだ」
「かしこまりました。そのようにいたします」