冷酷な騎士団長が手放してくれません
「ソフィア様!!!」


そこで、運よくアーニャが階段から駆け降りてくる。アーニャの後ろにいた従者が異変に気づき、目を剥いた。


「……貴様っ、お嬢様に何を……っ!」


従者は剣を振りかざし男に立ち向かったが、男は身を翻すとあっという間にどこかに消えてしまった。








「……お嬢様っ、ああ、なんてこと……」


アーニャがそこで嘆いているのは分かるのに、ソフィアは動くことが出来ない。


手の甲が、燃えるように熱かった。初めて味わう激痛に耐えれず、ソフィアの体の芯から力が抜けていく。膝が折れ、体が傾いた。


だが、ソフィアの小さな体が冷たい床に打ち付けられることはなかった。


少年が上体を起こし、ソフィアを抱き止めたのだ。


薄れゆく視界の中で、少年の整った顔だけが鮮明にソフィアの記憶に残っている。


秋の麦畑を彷彿とさせる、金色の緩やかな髪。


どこまでも深く、神秘的な青色の瞳。


その瞳から放たれる熱視線を感じながら、ソフィアは意識を手放した。
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