冷酷な騎士団長が手放してくれません
体に触れられるか、キスをされるのだと思った。


だが、予想に反してニールはそれ以上体を近づけようとはしなかった。


その代わり、首に小さな重みがかかる。


目を開けたソフィアは、自分の首もとに光るシルバーのネックレスを見て、目を瞬いた。オレンジサファイヤの埋め込まれた、満月型の高価そうなものだ。






「これは……」


「君に、土産だ」





月灯りの中で、ニールがうっすらと微笑む。


「その宝石を見た時、君のことを思い出した。君の髪の色に似ているからな。思った通り、よく似合う」


優しい語り口調だった。ソフィアは唖然としたまま、その美しいペンダントを見つめる。


「まさか、忙しいご政務の間にわざわざお買いになられたのですか……?」


「そうだ。婚約者に土産を買って、何が悪い?」


「でも……」


「君は、俺のものだ。肌身離さず、それを付けていろ」


困惑するソフィアを戒めるように、ニールが声音を強める。


今までの優しい口調から一転した雰囲気に、ソフィアは驚き肩を揺らした。


そんなソフィアを見て、ニールは我に返ったように表情を緩める。







「すまない。こういうことに、馴れていなくて。一人の女に寄り添いたいと思ったのは、初めてだからな」


「いいえ、大丈夫です……」


ズキンズキンと、胸の奥が痛む。そんなに優しくしないでと、強く思ってしまう。


自らを落ち着かせるようにふうっと息を吐くと、ニールは再び欄干に手を掛け、眼下に広がる自分の国を見渡した。


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