happiness
「さようならー」
の声と共に、走る足音が廊下に響く。
私も、そのなかに混じって、廊下を歩く。
角を曲がって、階段を下りる。
と、そのとき。

「一ノ瀬さーん!」

と可愛らしい声が、階段に響いた。
周りの大半の人が驚いて、振り向く。
もちろん、呼ばれた私も振り返った。
私を呼んだ主は、こっち!と言ったように手招きをしている。
それに気づいた私は急いで、6・7ほど階段をかけ上がった。
そのときには、振り返った周りの人達が階段を下りていた。
私は息を整えてから、
「何か、用?」
と顔をあげながら、尋ねた。
私はそのとき、あることに気づいた。
私と同じ学級委員の橋下さんだったことに。
「橋下…さ……ん…?」
橋下さんは、普段人見知りで、大人しい女の子。
なのに、あんな声。
橋下さんが、あんな大声を出すには、かなりの勇気がいるだろう。
私は、申し訳ないことをしてしまったと、後悔した。
「ゴメンね。呼び止めちゃって」
と罰の悪そうな顔をした。
私は、もっと悪いなぁと感じてしまった。
橋下さんのほうが、辛かっただろうに。
そう思いながら、返事を返す。
「いや、いいよ。それより、私に何か?」
私がそう言うと、彼女はもっと罰の悪そうな顔をした。
ー私は、その理由を数秒後に知ることになるとはー
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