愛される自信をキミにあげる
リビングのソファーで大人一人分の距離を開けて座る。
恋人なんだから、もう少し近づいた方がよかったのだろうか。
この間行ったバーでは、カウンタースツールがもともと近い位置に配置されていたから、自然に肩を並べられたけれど、これだけ広いL字型のソファーだと、近くに座る方が不自然に思えて何となく距離が空いてしまう。
普通はどれくらい距離を空けるものなのだろう。
変なことばかり考えてしまい、あたしの心は落ち着かない。
「笑留、今日どうしよっか」
ふいにかけられた声に、あたしは肩を大きく震わせた。
「あ、はいっ」
「何でそんなに緊張するかな……あ、そうだ。じゃあ、練習しよっか」
練習……何のだろう。
あたしが首を傾げると、ちょいちょいと三条課長に手招きされる。
「笑留が、俺に触られることに慣れる練習。はい、ココおいで?」
三条課長がココと手を置いたのは、あろうことか膝の上。
もちろん、あたしのではない。
三条課長の膝の上だ。
「そ、そんなのっ」
「早くこないとキスするよ」
「うひゃぁ」
え、どうしよう。
イヤじゃないんだけど。
でも、キスを期待してると思われるのも恥ずかしくて、半ばパニック状態のままあたしは慌てて三条課長の膝の上にまたがった。
「はい、よくできました」
あ、と気づいた時には目の前に三条課長の顔があった。
チュッと湿った音を立てながら、額に触れた唇が離れていく。
唇、じゃないんだ──。
ちょっとだけ残念に思っていると、腰に回された手に身体を引き寄せられて密着度が上がる。
「ち、ちかっ……近いですっ」
「慣れてよ」
「慣れませんっ。こんなカッコいい人毎日見たって、慣れるわけないじゃないですか」
「笑留にカッコいいって言われるの嬉しいね。襲っていい?」
「ダ、ダメっ、です……」
背中をスルッと撫でられて、得体の知れない感覚に襲われる。
なんだろう。
体調は悪くなかったはずだが、まさか風邪でも引いたのだろうか。
寒気というわけではないけれど、身体の中心がジンって熱くなる。
ピクリと背筋をしならせたあたしの反応を見て、三条課長はさらにくびれたウエスト部分を撫でてくる。
「な……なんか、三条課長に触られてると……変なんです。だから……っ」
このままではおかしな声が出てしまいそうだ。
変な女だと思われたくない。
あたしは紅潮した顔を彼の胸に埋めることで隠しながら、必死に言い募った。
「本気で襲いそうになるから、あんまそういうこと言わないでね」
「そういうことって?」
「俺を煽るような可愛いこと言わないでってこと」
そんなことを言ったつもりはないのに──そう言おうとして口を開いたと同時に、三条課長の唇が重なった。
「ん……っ」
触れるだけだった唇が、あたしの下唇を甘噛みする。
呼吸すら苦しくなるほど、貪るようなキスが繰り返されれば、思考が奪われてしまったかのように頭の中が真っ白になった。
三条課長の舌の動きに全身の感覚が集中する。
ぬめる舌に口蓋を舐められて、腰に感じる重苦しい感覚がひどくなった。
シンとした室内に唾液の絡まる濡れた音が響くと、中心から何かが溢れてきそうで居ても立っても居られなくなる。
「はぁっ……ん」
自分のものとは思えない艶めかしい甘い声が漏れる。けれど、熱に浮かされしまった状態では、そんなことを気にする余裕もなかった。
彼の上に跨がりながら無意識に腰を捩ると、唇と唇の隙間から三条課長の荒い息が漏れ聞こえた。
背中を撫でていた手がシャツの隙間から中へと入ってきて、背中からゾクゾクとした痺れがせり上がってくる。
あたしがビクッと身体を揺らすと、何かに気づいたように三条課長の手が元の場所に戻される。
「……っ、この体勢でキスするの……ちょっとヤバいね」
「え……?」
密着していた身体がほんの少しだけ離されてしまって、寂しさに胸が切なくなった。
やはりあたしだとダメなんだろうかと、悲しくなってしまう。
「触るの……イヤ、でしたか?」
もしかしたら、これ以上は無理だと思われたのかもしれない。
どうせキスするならもっと可愛い子の方がいいに決まっている。
だから、調子に乗ったらダメなんだ。
「笑留、多分すごーく誤解してると思うんだけどね。俺はキミのことが好きだから、触りたくて堪らない。けど、それ以上に怖がらせたくないから、理性が保てるように今頭の中で念仏唱えてる」
「ね、念仏?」
「笑留が俺に触られるのに早く慣れてくれないと……暴走しそう」
三条課長の甘い言葉が、あたしの心に浸透していく。
可愛い、好きだと言われるたびに、物語のお姫様になったみたいに世界が輝く。
「英臣さん……慣れたって言ったら、もっとキスしてくれますか?」
「まったく、俺の理性試してない? 可愛すぎて堪んないんだけど」
三条課長があたしを可愛くしてくれるんです。
離れてしまった身体を再び密着させて、あたしは自分から三条課長の肩に手を置いた。
すぐに、濡れた唇が重なってあたしは充足感に酔いしれた。
恋人なんだから、もう少し近づいた方がよかったのだろうか。
この間行ったバーでは、カウンタースツールがもともと近い位置に配置されていたから、自然に肩を並べられたけれど、これだけ広いL字型のソファーだと、近くに座る方が不自然に思えて何となく距離が空いてしまう。
普通はどれくらい距離を空けるものなのだろう。
変なことばかり考えてしまい、あたしの心は落ち着かない。
「笑留、今日どうしよっか」
ふいにかけられた声に、あたしは肩を大きく震わせた。
「あ、はいっ」
「何でそんなに緊張するかな……あ、そうだ。じゃあ、練習しよっか」
練習……何のだろう。
あたしが首を傾げると、ちょいちょいと三条課長に手招きされる。
「笑留が、俺に触られることに慣れる練習。はい、ココおいで?」
三条課長がココと手を置いたのは、あろうことか膝の上。
もちろん、あたしのではない。
三条課長の膝の上だ。
「そ、そんなのっ」
「早くこないとキスするよ」
「うひゃぁ」
え、どうしよう。
イヤじゃないんだけど。
でも、キスを期待してると思われるのも恥ずかしくて、半ばパニック状態のままあたしは慌てて三条課長の膝の上にまたがった。
「はい、よくできました」
あ、と気づいた時には目の前に三条課長の顔があった。
チュッと湿った音を立てながら、額に触れた唇が離れていく。
唇、じゃないんだ──。
ちょっとだけ残念に思っていると、腰に回された手に身体を引き寄せられて密着度が上がる。
「ち、ちかっ……近いですっ」
「慣れてよ」
「慣れませんっ。こんなカッコいい人毎日見たって、慣れるわけないじゃないですか」
「笑留にカッコいいって言われるの嬉しいね。襲っていい?」
「ダ、ダメっ、です……」
背中をスルッと撫でられて、得体の知れない感覚に襲われる。
なんだろう。
体調は悪くなかったはずだが、まさか風邪でも引いたのだろうか。
寒気というわけではないけれど、身体の中心がジンって熱くなる。
ピクリと背筋をしならせたあたしの反応を見て、三条課長はさらにくびれたウエスト部分を撫でてくる。
「な……なんか、三条課長に触られてると……変なんです。だから……っ」
このままではおかしな声が出てしまいそうだ。
変な女だと思われたくない。
あたしは紅潮した顔を彼の胸に埋めることで隠しながら、必死に言い募った。
「本気で襲いそうになるから、あんまそういうこと言わないでね」
「そういうことって?」
「俺を煽るような可愛いこと言わないでってこと」
そんなことを言ったつもりはないのに──そう言おうとして口を開いたと同時に、三条課長の唇が重なった。
「ん……っ」
触れるだけだった唇が、あたしの下唇を甘噛みする。
呼吸すら苦しくなるほど、貪るようなキスが繰り返されれば、思考が奪われてしまったかのように頭の中が真っ白になった。
三条課長の舌の動きに全身の感覚が集中する。
ぬめる舌に口蓋を舐められて、腰に感じる重苦しい感覚がひどくなった。
シンとした室内に唾液の絡まる濡れた音が響くと、中心から何かが溢れてきそうで居ても立っても居られなくなる。
「はぁっ……ん」
自分のものとは思えない艶めかしい甘い声が漏れる。けれど、熱に浮かされしまった状態では、そんなことを気にする余裕もなかった。
彼の上に跨がりながら無意識に腰を捩ると、唇と唇の隙間から三条課長の荒い息が漏れ聞こえた。
背中を撫でていた手がシャツの隙間から中へと入ってきて、背中からゾクゾクとした痺れがせり上がってくる。
あたしがビクッと身体を揺らすと、何かに気づいたように三条課長の手が元の場所に戻される。
「……っ、この体勢でキスするの……ちょっとヤバいね」
「え……?」
密着していた身体がほんの少しだけ離されてしまって、寂しさに胸が切なくなった。
やはりあたしだとダメなんだろうかと、悲しくなってしまう。
「触るの……イヤ、でしたか?」
もしかしたら、これ以上は無理だと思われたのかもしれない。
どうせキスするならもっと可愛い子の方がいいに決まっている。
だから、調子に乗ったらダメなんだ。
「笑留、多分すごーく誤解してると思うんだけどね。俺はキミのことが好きだから、触りたくて堪らない。けど、それ以上に怖がらせたくないから、理性が保てるように今頭の中で念仏唱えてる」
「ね、念仏?」
「笑留が俺に触られるのに早く慣れてくれないと……暴走しそう」
三条課長の甘い言葉が、あたしの心に浸透していく。
可愛い、好きだと言われるたびに、物語のお姫様になったみたいに世界が輝く。
「英臣さん……慣れたって言ったら、もっとキスしてくれますか?」
「まったく、俺の理性試してない? 可愛すぎて堪んないんだけど」
三条課長があたしを可愛くしてくれるんです。
離れてしまった身体を再び密着させて、あたしは自分から三条課長の肩に手を置いた。
すぐに、濡れた唇が重なってあたしは充足感に酔いしれた。