愛される自信をキミにあげる
気づいた時には、空は明るく白んでいた。
カーテンの隙間から太陽の光が差し込み、フローリングにまるで海の中のような模様を映し出す。
綺麗だなんて思ったのは一瞬で、あまりの身体の気怠さに思わず眉を寄せる。
腰のあたりにも痛みを感じて寝返りを打つと、真横に驚くほどの美形がいた。
うわぁ〜どうしよう。
身体の怠さがどこかに飛んでいった。
まつ毛長いし、至近距離で見ても毛穴の一つも見つからない。
いつもは、こんなにじっくりと顔を見る機会なんてない。
多分見せてって言えば見せてくれると思うけど、恥ずかしいし女の子のセリフにしては、大分はしたない。
今日みたいな日にしかきっと堪能できない。
「おはよ、笑留……そんなに見られると照れるんだけど」
「ひゃぁっ!」
三条課長の目がパチっと開いて、あたしは思わず掛け布団を頭から被る。
しかし、布団をあっという間に剥がされて額と額がくっつけられた。
お互いに身を包むものは何も着てなくて、触れ合った場所から体温が伝わる。
また、身体に甘い疼きが起こりそうだ。
三条課長が念仏を唱えてるって言ってた意味が、今ようやく理解できた。
昨夜の情事を思い出しそうになるのを必死に抑え込む。
「こら、叫びたいのは俺だよ。寝顔って恥ずかしいでしょ」
「めっちゃくちゃ格好いい寝顔でした……」
「何その堪能しきった顔。まあ、喜んでくれて何よりです」
ギュッと抱きしめられて、ますます肌と肌が密着する。
昨夜みたいに部屋は暗くないんですから、これ以上は無理です。
気持ちよすぎて、何も考えられなくなる。目をギュって瞑ったり時々薄目を開けたり、そんな顔明るい場所で見せられるはずがない。
あたしの気持ちを悟ってくれたのか、三条課長の唇は軽く触れるだけで離れていった。
それはそれで物足りないような、寂しいような気分になる。
「もっと、して欲しい?」
「して……ほしいです」
三条課長の顔が嬉しそうに綻ぶ。
好きだ、可愛いって、言葉と態度で愛情をたくさんもらった。
まるで物語のヒロインになったみたい。
主人公はあたし、恋人は三条課長。
王子様みたいな彼と恋に落ちて結婚する。まだしばらくの間は二人っきりで過ごしたい。
何年かしたら、子どもができて家族が増える。
ずっと、ずっと年老いても変わらずにそばにいて──。
なんだか、それが妄想だけじゃないような気がする。
あたしこんなに幸せでいいんだろうか。