恋よ、来い。 ~傷心デレラの忘れもの~
10年ぶりの、再会
「湖都ー」
「なぁに?お母さん」
「今日はどこかに出かけるの?」
「翔が桜見たいって言ってるんだけど。こっちはもう咲いてる?」
「そうねぇ・・開花してる所もあるけど、もう少しと言ったところかしら。たぶん、今週末あたりが満開じゃないかしらね」
「あ、そぅ。じゃぁ、お弁当を持って、近くの公園にでも行ってみる。桜が咲いてなくても、ピクニックできれば翔も満足すると思うから」
「そうね。また寒さが戻って来たけど、少しくらい外に出て気分転換してらっしゃい」
「うん」
「あぁそうそう。今日岸川さんがお店に来たら、事務の人、まだ探してるかどうか聞いてみるわね」
「あ・・・そのこと、だけど・・・」
「何よ湖都ちゃん。嫌そうな顔して。あんたまさか、男の人が上司なのはヤダとか言うんじゃないでしょうね?」
「ううんっ!そういうんじゃなくって」

顔と両手を思いっきり左右にふって否定をする私に、母は優しく「ねぇ、湖都」と言った。

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