恋よ、来い。 ~傷心デレラの忘れもの~
「いらっしゃい。さあどうぞこちらへ。私は事務担当の土井(どい)です。所長は今、スカイプで打ち合わせ中なんですよ。あと5分くらいで切り上げて来るそうですから、それまでここで待っててくださいとのことです」
「はい」
「この子は息子さんかしら?」
「あ、はい。息子の翔です。翔、“こんにちは”は?」
「・・こんにちは」
「こんにちは!翔くん。よくご挨拶できたわねぇ。翔くん、何か飲む?牛乳とか、ジュースもあるわよ」
「ジュース・・ママ、いい?」
「果汁100%のジュースだから、子どもでも安心して飲めるわよ」
「あぁそれなら。はい、お願いします」
「りんごとオレンジがあるけど、翔くんどっちがいい?」
「オレンジ!」
「卯佐美さんは何を飲む?コーヒー、紅茶、ジュースにお水・・」
「じゃあお水を。お願いします」
「はい分かりました。ちょっと待っててね」

私と翔にそう言った土井さんは、ニッコリ微笑むと、応接室のような部屋からそっと出た。

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