恋よ、来い。 ~傷心デレラの忘れもの~
それでも・・10年前に一晩だけ会っただけでも。
結婚して名字が変わっていても。
小さな子どもを育てることを最優先したカジュアルな服ばかり着ていても、岸川さんが「こいつ誰?知らない女だ」と思うほど、私の外見上は劇変していないはず。

ということは・・・まさか岸川さん、私のことを覚えてないの・・・?

私は、ショックを受けた以上に、失望していることに気がついた。
そのことに、何より私自身が驚いてしまったけれど、そんな表情を出さないようにする術は、壮介さんが繰り返す浮気を知るたびに、いつの間にか身についてしまっていたので、ここでも自然と隠すことができた。

それでも私は、岸川さんから目を逸らして、つと俯いてしまったけど。

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