恋よ、来い。 ~傷心デレラの忘れもの~
「俺は、ミズキっていうんだ」
「ミズキ?ママのばぁばとおんなじなまえだ!」
「そうなんだよー」

これは・・・!

10年前に、私と岸川さんが最初に話した「二人共通の名前」のことを、10年経った今、私の幼い息子と岸川さんが話してて、それを私はそばで聞いてるなんて・・・。

一瞬私は、10年前にタイムスリップしたような錯覚に陥った。

「でも、このおばちゃんは、“しょちょ”っていってたよ?」
「それは仕事のときの名前っつーか・・まぁ、呼び方だな」
「ふ~ん」
「それでだな、今から翔くんのママと俺は、仕事の話をするんだ。この壁の向こう側に、俺たちは行く。すぐ、そうだな・・あの時計、見てごらん」と岸川さんに言われた翔は、素直に従った。

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