恋よ、来い。 ~傷心デレラの忘れもの~
初めての“違い”、”たった”9歳の年の差
岸川さんに聞いてから、私は絶対アップルシナモン味のパウンドケーキを食べようと思っていたのに、カフェ・レストランにあるスイーツはどれも美味しそうで、つい目移りしながらどれにしようかと迷っている自分がいた。
だけど、結局私はアップルシナモン味のパウンドケーキを選んだ。
岸川さんが一押しの推薦したから、という理由だけじゃない。
そこに「焼きたて」の札が立っていたのが、最終的な決め手だった。
事実、ケーキをフォークでサクッと切ると湯気が立つ。
そしてリンゴとシナモンの香りが、久しぶりに私の食欲を刺激してくれた。

「んー・・・おいしーい!」と言いながら感激している私を、向かいに座っている岸川さんは、ニコニコしながら見ている。
私はつい、つっかかるように「なんですか」と言った。

< 239 / 483 >

この作品をシェア

pagetop