恋よ、来い。 ~傷心デレラの忘れもの~
今まではずっと、壮介さんの度重なる浮気に耐えてきた。
妻の私さえ耐えれば、この結婚生活はうまくいくんだと思っていたし、実際に壮介さんからもそう言われた。
それに翔もいる。
まだ3歳の翔は、自分の両親がこんな「事情」を抱え持っているなんて知らない。
そして翔は、壮介さんが大好きだ。
息子として父親を慕っている。全面的に信頼している。
その気持ちを汲んで、私たちは決して、翔の目の前はもちろん、翔に「おやすみ」を言った直後でさえ、言い争いはしなかった。
私たちが言い争いをするときは、翔がぐっすり寝ているときか、翔が家にいない時だけ。
でも翔が家にいない時は、大抵が幼稚園に行ってる時。つまり、壮介さんは仕事に行ってる。
だから結局のところは、翔がぐっすり寝ているときに、私たちは言い争いをしていた。

私は、持って行き場のない怒りや悲しみ、虚しさや悔しさを、自分の内に閉じ込めるしかなかった。

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