恋よ、来い。 ~傷心デレラの忘れもの~
私の“懺悔”から数秒の沈黙の後、岸川さんはまず、「あ、そう」とだけ言った。

「じゃあ、“あのこと”も覚えてないんだ」
「な、なんですかっ!?“あのこと”って」
「俺たちがどんな話をしたのか、とか」
「それは、あんまり・・・・・・」

と言うより、ほとんど――たぶん――覚えてない。
楽しい雰囲気だったとは思う。面白くて笑っていたことは、断片的に覚えてるから。
だけど、具体的な話題までは思い出せない。

私は頭を左右にふりながら、岸川さんに「ごめんなさい」と言った。

「じゃあ、俺たちが部屋に着いた後のことも覚えてないよなぁ?」
「お、覚えてない、です・・・・・・けど、わたし・・・・・」
< 276 / 483 >

この作品をシェア

pagetop