恋よ、来い。 ~傷心デレラの忘れもの~
壮介さんにとって私は、確かに「控えの妻」という位置づけだったと思う。
だって、いくら私が壮介さんの妻でも・・・10年前、初めて会った男の人に、一度だけ・・一夜を共に過ごしてしまったような、身持ちの悪いふしだらな女でも、他の女と「軽い浮気」をした主人に、自分の体を触れられることは耐えられなかったから。
だから私は、壮介さんが浮気をしていると知った時点で、主人と寝室を別にした。
自分の心を護るために、こうすることだけは、どうしても譲れなかった。
それを主人は、「大っぴらに浮気をしてもいいと妻から許可が下りた」と、都合よく解釈した・・・。

私は翔に「なんでもない」と言って、ニッコリ微笑んだ後、再び車窓に視線を移した。

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