恋よ、来い。 ~傷心デレラの忘れもの~
壮介さんは軽くため息をつくと「どうせおまえのことだ、仮に書置きがなくてもお義母さんか、横浜の義姉んところくらいしか行くあてがないことくらい、俺にも分かる」と言った。

ため息のつき方といい、言い方といい、全てが私をバカにしている態度をドラマチックに演出するためのものだというのが、アリアリと分かる。
いくらこの人に対して関心がないとはいえ、私を苛立たせるには十分効果的な「演出」だ。

「それに、俺が連絡すれば、おまえは翔を連れてどこかへ行方をくらませてしまうかもしれないと思った。だから」
「不意打ちで来たのね。そんなことするはずないじゃない。私だってあなたと会う必要があるんだから」
「連絡しない方がいいと思ったんだよ。お互いにこれ以上疲れることは避けたかった」
「な・・」
「今日は仕事を早引いて来てやったんだぞ。ありがたいとは思わないのか?」
「思わなきゃいけないの?」と言い返した私に、壮介さんはまたため息をついて応えた。
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