恋よ、来い。 ~傷心デレラの忘れもの~
大通りに出たのでタクシーを拾おうとしたが、なかなかつかまらないことも、苛立ちに拍車をかけた。
こんなことなら義母宅まで乗ってきたタクシーを待たせておけばよかった。
そうすれば翔を乗せてサッサと帰ることもできたのにと思った途端、チッと舌打ちまでしてしまった。
かなりイラついてる証拠だ。

・・・まあいい。
もしあそこでタクシーを待たせていたら、あの一部始終をタクシーの運転手に見られていたことになる。
それにあのときは、いつまで待たせるか分からなかった。
だからタクシーを帰らせたんだったと、今更のように思い出した。

どうやら少し歩いた方が、返って苛立ちを静めることになるだろうと判断した俺は、気を取り直し、再び駅に向かって歩き出した。
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