恋よ、来い。 ~傷心デレラの忘れもの~
私の泣き声に混じって、翔の静かに泣く声も聞こえる。
母親と小さな息子が地べたにへたりこんで、お互い抱きしめ合いながら泣いている姿を、通りすがりの誰かや、ご近所さんに見られたら・・なんて気にする余地は、私にはなかった。

私が今、したいこと。それは・・・今は翔の存在を感じていたい。
私の息子は今、私の腕の中にいるという現実を、感じていたかった。それだけだ。

息子の翔は、きっと心が深く傷ついたに違いない。
仲良しであるはずの両親が、醜く言い争っている姿を目の当たりにしてしまっただけでなく、その言動まで聞いてしまったのだから。

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