恋よ、来い。 ~傷心デレラの忘れもの~
さようなら、そうすけさん(後編)
「・・・間違い、ありませんか」
「・・・・・・はい。この人は・・卯佐美壮介さん・・・主人です」

シンと静まり返っている遺体安置所で、壮介さんを“確認”した私の声が、淡々と響いた。
続いて、「そうですか。どうもありがとうございました」という飯田さんの声が聞こえたのと同時に、壮介さんの顔に、再び白い布が被された。
そのおかげで、私は、変わり果てた壮介さんの姿を見る必要がなくなった。
けれど私の目線は、壮介さんの「顔」の部分、ただ一点から動かなかったので、直接「死顔」――傷一つなく、きれいで生前とほとんど変わらない、だけど生気が抜けた感じは否めなかった――を見ることはなくなったけれど、まだ顔にかかっている白い布のところをじっと見ていた。
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