恋よ、来い。 ~傷心デレラの忘れもの~
「・・帰る途中、だったんです」
「はい?」
「長野の家に。あの人だけ帰る途中で・・まさかこんなことになってるなんて思ってもなかったから、てっきりもう、家に帰ってるって、私、思ってて・・・」
自分に言い聞かせるような感じで、呟くように言葉が出てきた。
同時に私は、自然と反応するようにトートバッグからハンカチを出すと、頬をツーッと伝う涙を機械的に拭っていた。
「お気の毒です」
「奥さんの心中、お察しします。さ、確認もしていただいたことですし、そろそろここを出ましょう」
私は、年配の飯田さんに促されるながら、遺体安置所を後にした。
扉が閉まった音すら、聞こえなかった―――。
「はい?」
「長野の家に。あの人だけ帰る途中で・・まさかこんなことになってるなんて思ってもなかったから、てっきりもう、家に帰ってるって、私、思ってて・・・」
自分に言い聞かせるような感じで、呟くように言葉が出てきた。
同時に私は、自然と反応するようにトートバッグからハンカチを出すと、頬をツーッと伝う涙を機械的に拭っていた。
「お気の毒です」
「奥さんの心中、お察しします。さ、確認もしていただいたことですし、そろそろここを出ましょう」
私は、年配の飯田さんに促されるながら、遺体安置所を後にした。
扉が閉まった音すら、聞こえなかった―――。