恋よ、来い。 ~傷心デレラの忘れもの~
「あまりおいしいとは言えないんですけどね、お茶でも一杯飲んで、少し心を落ち着けてください」
「すみません。ありがとうございます」

・・・確かに。このお茶はあまりおいしそうな気がしない。
だけど湯呑から伝わる暖かさを感じることができればそれで良かったので、私は緑茶を飲むことなく、しばらくの間、ただ湯呑を持って、自分の手を温めていた。

「そういえば。奥さんの実家は東京だと言われてましたね」
「あ・・はい。私の母――父は4年前に亡くなってます――の家が国立にあります」
「それで今回は、お母上の家に遊びに来てたんですな?」
「えぇ、まぁ・・・」
「差し支えなければ、ご実家の住所を教えていただけませんか」
「あぁ、はい」
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