恋よ、来い。 ～傷心デレラの忘れもの～

呆然とした顔で見ている私を、飯田刑事さんは同情の眼差しで見ながら、話を続けた。

「どうやらご主人は、信号が青から赤に変わったのを気づかないまま、横断歩道を渡っていたらしいんですな。これは複数の目撃証言で確認されておるんですよ。そして横から来た車（バン）にも気づかず、運転手の方も、ご主人という、いるはずのないところに、歩行者がいることに気づいて急ブレーキをかけたらしいんですが、時すでに遅しだった、というわけです」
「あぁ・・・・・」
「そこでご主人は何か、考え事をしながら歩いていたと思われるのです。最近ご主人に何か悩みごとがあったんじゃないんですか？」
「たとえば仕事上で何かトラブルがあったとか」
「さあ・・仕事のことは、全然聞いてないので分かりません」