恋よ、来い。 ~傷心デレラの忘れもの~
「借金があるとか」
「いえ。それはないと・・私の知ってる限りでは、の話ですけど」
「では、ご主人は実のところ病気になっていた、とかは」
「それもないと思います。少なくとも私は何も聞いてませんし、主人はずっと健康体のはずですけど」
「では身内で何か、たとえばご主人の両親の介護が大変だとか、ですね・・」
「壮介さんのご両親は幼い頃に亡くなっていて、彼は父方の祖父母に育てられたんですけど、その祖父母も、私の結婚前にはお二人ともすでに亡くなっていて、私は会ったことはないし。あの人には他に身寄りもいません」
「ありゃりゃりゃ。ご主人は肉親の縁に薄い人だったんですなぁ。うーん、じゃあご主人は一体、何をそんなに考え込みながら歩いてたんでしょうねぇ?」
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