恋よ、来い。 ~傷心デレラの忘れもの~
「それじゃあ」と言って立ち上がった飯田さんと津山さんをまねるように、私は湯呑を机の上に置くと、サッと立ち上がった。
その拍子にちょっとクラクラきてしまったけれど、目を何度か瞬かせて、どうにか踏ん張ることができた。

「本日はご足労いただいた上に色々とご協力くださって、心から感謝しております。どうもありがとうございました。それから、こんな所であれこれ不躾な質問をしてすいませんでしたね。随分と嫌な想いをされたことでしょう」
「嫌というか・・」
「少なくとも良くはなかったでしょうな」と言った飯田さんの言葉は、その通りだったけれど、私は「刑事さんたちも仕事をしているだけでしょうから」と言うにとどめておいた。
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