恋よ、来い。 ~傷心デレラの忘れもの~
「私・・卯佐美湖都(うさみ・こと)と申します」と言ったとき、前田さんが少しだけ反応したところを見ると、やっぱり私の顔までは知らなかったのかもしれない。

私は前田さんの考えを肯定するように小さく頷くと「卯佐美壮介(そうすけ)の妻です」と言った。
それで全てを悟った前田さんは、「ここで立ち話は何だから。近くにカフェがあるの。行きましょ」と言った。

「え?・・・あ」
「ちょっと休憩に行くわね。30分以内には戻るから」
「はーい。いってらっしゃいませー」

もうすでに歩き出した前田さんを追いかけるように、私は慌てて「パール」を出た。

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