恋よ、来い。 ~傷心デレラの忘れもの~
「・・・あ。もしもし。お母さん。私・・・うん。やっぱり、壮介さんだった。・・・明日、遺体の解剖をするって」と私が言ったとき、隣にいた岸川さんがハッと息を飲んだのが、気配で分かった。

・・・そうだった。岸川さんにまだ何も話してなかったと、今頃私は気がついた。

「・・・翔には明日、私から話す・・・・・・うん。あ、お母さん。私・・今夜は岸川さんと一緒にいても・・いい?今晩だけでいいから。ワガママ言ってるのは分かってる。けど・・・どうしても・・・岸川さんが必要なの」

端的に凝縮された、私の素直な気持ちを吐露しながら、私はまた、泣いていた。
この涙もきっと、今の私の素直な気持ちの表れに違いない―――。

そのとき岸川さんが、私のスマホをそっと取り上げた。
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