恋よ、来い。 ~傷心デレラの忘れもの~
長野の家が売れて、売却手続きが昨日終わり、ようやく壮介さんの遺産関係の処理は全て終わった。
「自分は壮介さんの事実上の妻なんだから、壮介さんの遺産を相続する権利がある」と――言い換えれば「遺産は全額私のものだ」と――主張した前田さんには、私の一存で、相続税を差し引いた半分、つまり二分の一の額を譲渡した。
私が相続した残り半分の遺産の中には、私を受取人にした生命保険金も含まれていたけれど、とにかく、それは全て、翔の学資に使うと決めている。
壮介さんの遺産は、「控え妻」であった私のためではなく、彼の息子のために役立てる方が、きっと壮介さんも喜ぶと思う。
何よりこれも、壮介さんの「遺志」であるはず―――。
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