浮気してるくせに平然な彼






「俺、美羽と別れないよ。だってまだこんなに好きなんだ」


 そう言っては、ゆっくりと苦しそうに私を抱きしめ始めた。


 …………ッツ!!!


 恐怖で体がビクッと反応してしまい『美羽は、抱かれる事は初めて?』その言葉を聞いて更に鳥肌が立つ。

 ……………気持ち悪い。


 陸くんは私を今から抱く気でいるらしく、私の腰へと腕を回してきた。


 いやだ…………!!抱かれるのも、全部、堀内くんがイイ!!



 心の中で強く思いながらギュッと目を瞑ると、


「汚い手でベタベタ触ってんじゃねぇよ」


クローゼットから堀内くんの声が聞こえてきて、陸くんの行動がピタッと止まった。


 このまま出てくるかと思いきや、堀内くんは出てくる様子もなく、静けさだけが増す。




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