ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています
津出さんはいかにも重役の秘書をしていそうな知的美人で、年齢は私よりふたつか三つほど上ではないかと思うのだが、それ以上に大人っぽい印象を与える。
それは老けて見えるということではなく、頼りがいのありそうな、落ち着いた雰囲気を纏っているという意味だ。
艶やかな長い黒髪はサイドをさりげなく編み込んで、それをひとつに結わえ、上品で控えめなベージュのリボンで飾っている。
切れ長二重の瞳にはクールな美しさがあり、気軽に声をかけにくい印象でもあった。
ニカッと歯を見せて笑顔を作る私に対し、彼女はニコリともしてくれず、どことなく侮蔑的な感じのする目を向けるだけ。
「社長室はこちらです」と事務的な口調で言うと、先に立って歩き出した。
うーん、話しかけにくいタイプの人だね。
しかし、社長の秘書を務めるからには相当に優秀なのだろう。
常に気を張って仕事をしていることであろうし、どうしても冷たい印象になってしまうのかもしれない。
日々、昼休みと終業時間を気にして呑気に働いている派遣社員の私からすれば、尊敬すべき立派な女性に違いない。
肩の上の脚立をガシャンガシャンと揺らしながら彼女について廊下を歩き、角を一度曲がって進んだ先の突き当たりに、社長室と書かれたプレートがついていた。
津出さんがノックすると「どうぞ」という低い声が小さく聞こえ、電子錠が解錠された音がした。
ドアを開けて「失礼します」と一礼した彼女は、横に一歩ずれて私を中に通してくれる。
「あ、どうも失礼します。総務の浜野です。電球を取り換えに来ました」
それは老けて見えるということではなく、頼りがいのありそうな、落ち着いた雰囲気を纏っているという意味だ。
艶やかな長い黒髪はサイドをさりげなく編み込んで、それをひとつに結わえ、上品で控えめなベージュのリボンで飾っている。
切れ長二重の瞳にはクールな美しさがあり、気軽に声をかけにくい印象でもあった。
ニカッと歯を見せて笑顔を作る私に対し、彼女はニコリともしてくれず、どことなく侮蔑的な感じのする目を向けるだけ。
「社長室はこちらです」と事務的な口調で言うと、先に立って歩き出した。
うーん、話しかけにくいタイプの人だね。
しかし、社長の秘書を務めるからには相当に優秀なのだろう。
常に気を張って仕事をしていることであろうし、どうしても冷たい印象になってしまうのかもしれない。
日々、昼休みと終業時間を気にして呑気に働いている派遣社員の私からすれば、尊敬すべき立派な女性に違いない。
肩の上の脚立をガシャンガシャンと揺らしながら彼女について廊下を歩き、角を一度曲がって進んだ先の突き当たりに、社長室と書かれたプレートがついていた。
津出さんがノックすると「どうぞ」という低い声が小さく聞こえ、電子錠が解錠された音がした。
ドアを開けて「失礼します」と一礼した彼女は、横に一歩ずれて私を中に通してくれる。
「あ、どうも失礼します。総務の浜野です。電球を取り換えに来ました」