ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています
大きな体を小さく丸め、ひとり愚痴をこぼす彼を見下ろしていると、可愛く思えて胸がキュンと音を立てた。

それは母性本能でも、友達としての情でもない。

私は彼の少年っぽい可愛らしい性格が大好きで、時折見せる大人の男の顔には、ゾクリと体の奥が熱くなる。


ああ……男勝りな私でも、ちゃんと恋ができるみたい。

私はよっしーが……。

「大好きだよ」


パッと顔を上げた彼は、驚いたように目を見開いて、それから喜びを隠すことなく破顔した。

立ち上がって私を抱きしめる……のではなく、急に横抱きに抱え上げるから、「わっ!」と声をあげた私は、慌てて彼の首にしがみついた。

額に軽いキスを落とされて頬を熱くすれば、今度は大人の男の顔をした彼が言う。


「もう我慢の限界だ。今夜はたっぷりと夕羽を愛したい。寝かせないから覚悟しろよ」


いやー、それは帰ってからの方が……。

役に立たない私はともかく、彼は寝るべきだ。明日の仕事に支障をきたしたら大変だもの。


そう思っていたのに、抱えられたまま長い廊下を移動してゲストルームに戻れば、私の芯も火照りだす。

ここは、彼に与えられた部屋で、中央には天蓋付きの異国情緒溢れる大きなベッドが置かれている。

高い位置にある透し彫りの窓からは、月光が差し込み、シーツの上にエキゾチックな模様を描いていた。
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