ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています
私は彼のヒーロー
◇◇◇
中東への出張から十日ほどが過ぎ、夏の暑さが和らいできた九月の上旬。
スマホのアラーム音が聞こえて眠りの中から浮上した私は、寝ぼけた頭で今日は平日か休日かと考える。
ええと……金曜か。なんで土曜じゃないんだ。
出社のために起きねばならないが、瞼が重くて開けられず、意識が眠りに戻ろうとする。
すると隣でモゾモゾとなにかが動く気配がして、クスリと笑う声の後に頬にチュッとキスされた。
「昨夜は激しくしてごめんね。あと十五分寝てなよ。朝食は俺が作るから」
良樹が朝ご飯を? 作れるの?
まぁいいか。おやすみ……。
寝ていいと言われた私は、すぐに夢の中へ。
十五分はあっという間に経過して、二度目のアラーム音を聞き、今度はなんとか目を開けた。
ここは一階の良樹の寝室で、シックで格調高いホテルのような内装だ。
ベッドはクイーンサイズとふたりで寝るには充分で、彼の求めに応じ、私は基本的にここで寝起きしている。
眠い目をこすりながらパジャマ姿で廊下に出て、洗面所へ。
顔を洗ってもまだ頭はクリアにならず、さて味噌汁でも作ろうかとあくびをしながらダイニングキッチンの扉を開ければ、コンロの前で悪戦苦闘している良樹がいた。