ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています
一階のダイニングキッチンで、椅子に座ってテーブルに頬杖をつき、テレビのバラエティ番組を見ながら良樹の帰りを待っていた。

二十時に帰ると言った彼だが、なにか問題が発生したようで、遅くなるという内容のメールが一時間半ほど前に届いていた。

カレーライスを作ったけど、こんなに遅くなるなら、社内でなにかデリバリーのものを食べればいいのにと、彼の空腹を心配する。

時計の針ばかり気にして、テレビの内容は頭に入ってこない。

まだかまだかと待ち続け、さらに三十分が経過して、やっと良樹が帰宅した。


「ただいま」とダイニングキッチンに現れた彼を見て、私はぎょっとする。

今朝は肌艶のいい健康そうな二十九歳に見えたのに、今は目の周りが落ち窪んで頬はこけ、三十歳くらい一気に老けたように見える。

いや、さすがにそれは言いすぎかもしれないが、やつれて見えるほどに疲れきっているのは確かであった。


慌てて立ち上がった私が、彼の頬を両手で挟んで「なにがあったの!? 敵の襲来?」と心配すれば、少しだけ笑ってくれる。

百八十五センチ超えの長身で、私にもたれかかるように両腕を回して抱きつく彼は、結構重い。

けれども、もっと体重をかけてもちゃんと支えるから、やつれた事情を話してほしいと思っていた。

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