ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています
するとやはり余計なことを言ってしまったようで、良樹がムッとした顔をする。

けれども、すぐに眉間の皺を解いてくれて、「違うよ」と静かな声で否定した。


「確かにこのプロジェクトの予算は最大限に抑えているけど、鈴木ネジ製作所にはそれ相応の値段を提示したつもりだよ。でも鈴木社長に、今は忙しくてこれ以上の仕事は受けられないと言われたそうだ。うちの担当者が食い下がったら、怒らせてしまったらしく……」


しつこく食い下がった事業部の担当者は相手社長に、『偉そうに。これだから大企業とは仕事したくねぇんだ』と言われたそうだ。

そして帰社後、事業部の部長に連れられて青ざめながら、社長室まで謝罪に来たらしい。


買い叩きではないが、私のイメージした大企業の横柄さと、弱い者いじめという構図は、当たらずも遠からず、といった感じだろうか。

事業部の担当者も責任感からなんとか仕事を受けてもらおうと焦ったのかもしれないけど、やり方がまずかったようだね。

どうしてもその特殊ネジが必要だというなら尚のこと、腰を低くしてお願いしなければ。


それで良樹は、プロジェクトの計画から練り直すのか、それとも鈴木社長ともう少し交渉を続けるのかで、緊急会議を開き、帰宅時間が遅くなったという話であった。

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