ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています
車窓の景色に唖然とする私が、「宮殿……」と独り言を呟けば、隣で良樹が「俺の家の迎賓館だよ」と教えてくれる。

その口振りはまるで「そこは俺んちの物置だよ」と庶民が言うような感じで、ものすごくあっさりとしたものだった。


ここは彼が生まれ育った場所で、この景色は見慣れたもの。

認識を改めようと思う。彼は富豪ではなく、大富豪なのかもしれない。


そう思うと同時に、あれ?となにかを間違えていることに気づきかける。

誕生会は、この迎賓館で行うようだ。

ここへ来る前に私がイメージしていたのは、彼の友人が三十人ほど集まってのセレブなホームパーティーで、自宅のリビングにシェフを呼んで料理を作らせたり、余興にミュージシャンを招く贅沢なもの。

それは私にとってはハイクラスな誕生会に違いないけれど、三門家の御曹司には豪華さが不足していた。


ねぇ……招待客の規模って、どれくらい?

友人だけじゃなく、もしや仕事関係の偉い人たちや、親族も参加するんじゃないよね?

彼の両親との対面を心配するより、さらに大事になる気がするんだけど……。


恐ろしくて質問できないまま、私はリムジンを降りて、迎賓館に足を踏み入れた。

< 156 / 204 >

この作品をシェア

pagetop