ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています
私の名前と、良樹の会社で働いていることを彼が説明し、それから「恋人です」とハッキリと告げれば、周囲がどよめいた。


「良樹が恋人を紹介してくれるとは、嬉しい驚きだよ」と最初に声をかけてきた友人男性は喜んでくれたけど、渋い顔をしている人もいた。

「恋人ということは、まだその先まではお決めになられていないということですか?」と結婚の意思を探ろうとしている中年男性がいたり、品のよい笑顔で敵意のこもる視線をぶつけてくる若い女性もいた。


「失礼ですが、浜野さんのご両親はどちらにお勤めでしょう? 良樹さんの選ばれたお相手ですもの、素晴らしいお家柄なのでしょうね」


縦巻きの長い髪をひとつに結わえ、赤いドレスを着たいかにもお嬢様的なこの人は、もしや良樹の妻の座を狙っているのかな……?

私にぞっこんな彼だから今までライバルの心配をしてこなかったけど、三門家の御曹司で、しかもイケメンとくれば、女性が寄ってこないはずがないよね……。


彼女の強い目力に気圧されそうになりつつも、質問に答えようと口を開いたが、「父は、ぎょーー」と言ったところで、迷いが生じて言葉を続けられなくなってしまった。

どうしよう。離島の漁協に所属している一介の漁師だと、言ってもいいのだろうか?

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