ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています
案の定、周りを囲う人たちが、私に敬意を評して握手を求めてきたり、「素晴らしい! さすがは三門さんに選ばれたお嬢さんだ」と褒め称える。

集団の中には、青い目をした外国人の青年もいて、私と握手しながら英語で話しかけてきた。

アラブ出張で私がさも活躍したように説明されたため、英語くらいは当然話せると思われてしまったようだ。


どうしよう、さっぱりわからない。

良樹の彼女のスキルとして、英語力は必須なのかもしれない。

明日から、英会話教室に通おうかな……。


会話するだけでこれほどまでに困らされるとは、セレブの集団は恐ろしい。

あらゆる面での能力不足に急に恥ずかしくなり、顔を火照らせた私は俯いた。

青い目の青年は、私の右手を両手で握るように握手しながら、まだペラペラと話しかけてくる。

すると彼の手を良樹が外し、少々声を低くして、日本語で注意を与えた。


「ミスターブラウン、彼女はとても恥ずかしがり屋でそのように手を握られると、なにも答えられなくなってしまうのです。どうかご理解ください」


「オー、ソーリー!」と両手を顔の横に上げた彼は、好意的な目を私に向けて、「オクユカシイ女性、日本的でタイヘン美しいデス」とイントネーションの少々おかしい日本語で私を褒めてくれた。
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