ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています
すると良樹は柱に背を預けてズボンのポケットに片手を入れ、余裕のポーズで笑った。


「みんなが勝手な解釈をしただけで、嘘をついてはいないよ」


「そうかもしれないけど、ものには言い方がーー」と反論しようとした私の頭にポンと手を置き、彼は「大丈夫」と言葉を遮る。


「心配しないで。夕羽は俺が守る」


男らしく頼もしい声と、キリッとした美々しい顔。形のよい唇の隙間に白い歯がキラリと輝いている。

思わず胸を弾ませかけた私だが、『いやいや、かっこつけられても、そうじゃないんだよ』と、解決していない問題にすぐに意識が戻された。


頭にのせられた大きな手を退けて、「次からは勘違いさせるような言い方はやめてね」と真顔で頼んだら、彼はなにかを考えるように視線を壁の絵画に向ける。

そして数秒黙ってから、「わかったよ」と微笑んだ。


「そうだね。夕羽ちゃんがどんな女性なのかを、俺の両親には包み隠さず話そうと思う。ごまかしたところで、生まれ育ちから全てを調べ上げるだろうし、意味はない」

「え……私、調査されるの?」

「ああ、変な意味に取らないで。俺の両親は物わかりの悪い堅物じゃない。きっと夕羽ちゃんを俺のパートナーとして認めてくれるはずだ」

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