ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています
肩が凝る高価なドレスより、汚してもよさそうなメイド服の方が着心地がいい。

ホッとした後は、『さて、働こう』と気合いを入れる。

良樹への誕生日プレゼントは、ホール係としての労働だ。

汗水垂らして、精一杯のお祝いをさせてもらいます!


それから三十分ほどが経ち、料理や飲み物を運んだり食器を下げたりと、私は忙しく会場内とバックヤードを往復していた。

他のホールスタッフには、誰だろうという目を向けられたけど、新人のふりをして「ご指導よろしくお願いします」と笑顔で挨拶したら、追及されることはなかった。

八百人の客を相手にするスタッフの人数も相当多いので、ひとり増えたくらいでは気づかれず、なにも問題なく働いている。


先ほど招待客数名の祝辞が終わったところで、乾杯した後は、セレブたちが自由にホール内を動き回る。

豪奢な宮殿風のホール内には、白いテーブルクロスをかけた長テーブルが三列に伸びていて、大皿に盛られたご馳走が所狭しと並べられていた。

立食形式のパーティーとなっているため、客たちは料理を楽しみつつ立ち話に興じ、私は銀のトレーを片手に食べ終えた食器を下げたり、リクエストされた飲み物を届けたりと、汗を流していた。

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