ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています
「よかった、思い出してくれた! そうだよ夕羽ちゃん。よっしーと呼ばれるの懐かしいな。本名は忘れたと思うけど、三門良樹(よしき)だよ」

「いやー、すぐに思い出せなくてごめん。変わりすぎなんだよ。私の中のよっしーは、背も小さくて可愛い弟みたいな子だったのに。喘息は治ったの?」


彼の持病だった喘息は、大人になると症状の程度も発作頻度も下がり、今ではストレスが過度に高まった日の夜中に、たまに息苦しくなるという程度らしい。

それも薬剤スプレーをひと吹きすれば、すぐに治るのだとか。


それはなによりと思った後は、「夕羽ちゃんも変わったよ。すっかり大人の綺麗な女性になって、名前を聞くまでは気づけなかった」というツッコミどころのある感想を聞かされる。


綺麗な大人の女性とは、津出さんのような人を言うのでは?

小山さんも美人だけど、あっちは可愛いタイプだよね。

そういえばよっしーは、捕った小蟹を素揚げにしようと言った私を止めて、海にリリースするような優しい子だった。

今もきっと気を使って褒めてくれたのだろうと判断し、私はアハハと笑ってその肩をバシバシと叩いた。


「お世辞や慰めはいらないよ。私は昔からガサツな性格で、女らしくできないんだよね。したいとも思わないけど」
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