ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています
すると彼はなぜか衝撃を受けたような顔をして、その後に「違う！」と慌てて弁解を始めた。


「俺は胸の大小で女性の価値を決めるような男じゃない。夕羽ちゃんだから……夕羽ちゃんのおっぱいだから好きなんだ！」

「そ、そうなんだ。巨乳好きかと聞いて悪かったよ。だからお願い。もう少し離れて、落ち着いて話をしよう。ね？」


私たちには明らかな温度差がある。

素っ気ない再会よりは興奮してくれる方が嬉しいけれど、もう少しテンションを下げてくれないとついていけない。

引き気味の私に気づいたのか、彼はハッとした顔をして、それから「ごめん」と呟き、さめざめと泣きだした。

今度はどうした!?

情緒が不安定すぎるでしょう……と面食らう私に、彼は急降下したテンションで訳を話してくれる。


「嬉しくて調子に乗ってしまったんだ。夕羽ちゃんは死んだものだと思ってたから、喜びが突き抜けて、つい……」

「へ？　どうしてそんな思い込みを？」


生まれてから一度も大病したことはなく、健康優良児として育ったのに、なぜ死亡説が湧いたのかと目を瞬かせる。

親指の腹で涙を拭った彼は、こんな話をしてくれた。


「俺は騙されてたんだーー」


ふたりで遊んだあの夏の終わり、再会を約束してよっしーは東京へ帰っていった。

半月ほどして私に手紙を書いたそうだが、待てど暮らせど返事は来ない。

返事の催促をはっきりと記した手紙を再度送っても音沙汰なく、そうしたら母親に『あの子は海難事故で亡くなったのよ』と教えられたそうだ。
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