ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています
あの夏の私は、彼の住まう屋敷に毎日忍び込んだ。

裏口のドアに鍵をかけられて入れなかった時は、外壁に梯子を立てかけて、二階にある彼の部屋の窓にひょっこりと顔を出し『よっしー!』と呼びかけたのだ。

その時の、私に振り向いた少年の笑顔に似ている。


面影、見つけた。

彼は確かに、懐かしくて可愛いあの少年だ。


「よっしー」と親しみを込めて呼びかければ、「夕羽ちゃん!」と嬉しそうに抱きついてくる。

長身の彼なので、腰を落としてその顔を私の胸に埋め、肉感を楽しむようにスリスリと……。


「生きていてくれてありがとう」


セクハラ……だけど、まぁいいか。

可愛いよっしーだから許してあげようと、私は彼の頭を抱えるように腕を回し、その髪をよしよしと撫でていた。


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