ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています
すると、「頭を上げろ」とすぐに声がかけられる。
それで許されたものだと気を抜きかけたのに、再び目にした社長の瞳の鋭さは変わらず、腕組みをして私の頭から爪先までに視線を往復させると、「所属と名は?」と厳しい口調で聞いてきた。
それを聞くということは、もう駄目かもしれない。
総務の上司に連絡がいって、明日から来なくていいと言われそうな嫌な予感がしていた。
それでも尋ねられて答えないわけにはいかず、半ば諦めの気持ちで返事をする。
「総務部で庶務を担当しております、浜野夕羽(ゆう)です。派遣会社を通じ、四月から御社にお世話になっております」
その途端、社長の目が大きく見開かれた。
なぜか衝撃を受けているような彼に、こちらの方が驚かされる。
肩をビクつかせ、私はなにかおかしな返答をしたのだろうかと戸惑えば、「ゆ、夕羽ちゃん……?」と社長に呼びかけられた。
「はい?」
親しげに呼んでくれた理由はなんだろう。
首を傾げたその時、彼の真後ろから「社長、お時間が迫っております」という若い女性の声がした。
上品な水色のスカートスーツ姿の、秘書と思しき女性が彼の陰から現れて、「あと二分で定例会議が始まります」と淡々とした口調で告げていた。
それで許されたものだと気を抜きかけたのに、再び目にした社長の瞳の鋭さは変わらず、腕組みをして私の頭から爪先までに視線を往復させると、「所属と名は?」と厳しい口調で聞いてきた。
それを聞くということは、もう駄目かもしれない。
総務の上司に連絡がいって、明日から来なくていいと言われそうな嫌な予感がしていた。
それでも尋ねられて答えないわけにはいかず、半ば諦めの気持ちで返事をする。
「総務部で庶務を担当しております、浜野夕羽(ゆう)です。派遣会社を通じ、四月から御社にお世話になっております」
その途端、社長の目が大きく見開かれた。
なぜか衝撃を受けているような彼に、こちらの方が驚かされる。
肩をビクつかせ、私はなにかおかしな返答をしたのだろうかと戸惑えば、「ゆ、夕羽ちゃん……?」と社長に呼びかけられた。
「はい?」
親しげに呼んでくれた理由はなんだろう。
首を傾げたその時、彼の真後ろから「社長、お時間が迫っております」という若い女性の声がした。
上品な水色のスカートスーツ姿の、秘書と思しき女性が彼の陰から現れて、「あと二分で定例会議が始まります」と淡々とした口調で告げていた。