ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています

よっしーの祖父の墓参りを約束した日から数日が過ぎた日曜日。

早朝の五時に私は、黒塗りの高級車の後部席に乗車していた。


隣には黒いフォーマルスーツに身を包んだ彼がいて、私もワンピースタイプの礼服を着ている。

三門家の墓参りとなると、気軽な服装では駄目なのだそうだ。


時間が早すぎるのは、彼が今日も仕事だということなので仕方ない。

彼を『良樹様』と呼んで三門家に仕えている、壮年の男性運転手には、『朝っぱらからすみません』と謝っておいた。


車は空いている車道を快調に飛ばしている。

東京郊外にある三門家の墓までは、まだもう少しかかるという話しだ。

高級車というものは、シートのクッションも空調も、揺れさえも快適で眠たくなる。

昨夜は一時までひとり酒をしていたことも原因かもしれず、つい大あくびをしてしまったら、よっしーが親切心をみせてくれた。


「眠い? 俺の肩に寄りかかって寝てなよ」


ありがたい申し出だけど、「眠くないよ」と断り、顔を車窓に向けた。

フォーマルスーツ姿の彼は目に毒だ。

黒は男を凛々しく頼もしく感じさせ、いつもにも増して素敵だと感じてしまうため、なるべく隣を見ないようにしている。

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