ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています
眉を寄せる私に歩み寄った彼は、少し寂しげな顔をしている。

私の頬を大きな手のひらで包み、額同士をコツンとぶつけるから、鼓動が跳ねた。

またキスされるのではと身構えたが、そうではなく、すぐに額も手も離れて近すぎる顔の距離は元に戻された。

小さなため息をついてから、彼はアクセサリーを私に贈りたい男心を聞かせてくれる。


「ディナーショーって、もっくんと行くんだろ?」

「そうだけど……なんで、もっくんの話?」

「妬いてるの。夕羽ちゃんが俺より親しい間柄だって言ったから。せめて俺が贈ったネックレスをつけて行ってもらわないと、気持ちよく送り出せない。俺の方が色々としてあげられる立場にいると思わせてよ」


速度を上げた鼓動は、落ち着きを取り戻していた。

真顔の彼を見ながら、腕組みをして考える。


友達でも執着心からやきもちを焼くことはあるのかもしれないが、そこまでもっくんにこだわる気持ちはわからない。

初めてもっくんの話をした時、私を狙っている危険人物扱いをして、慌てていたっけ。

彼の静かな語り口から判断するに、今はそこまでの焦りはない様子だが、それでも気に入らない存在なのは確かなようだ。

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