ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています
「お盆休みも別行動だったろ。俺の実家においでって言ったのに、来てくれなかった」

「いやいや、三門家の法要に呼ばれても、そりゃ断るよ。部外者だし。それにお盆は島に帰って来いと言われて、漁の手伝いに忙しかったんだよ」


そんなに一緒にいたいなら、私の帰省についてきて漁を手伝えばよかったじゃないかと反論したくなったが、都会っ子の彼に漁は無理だろう。

三門家の御曹司としての役目を、おろそかにするわけにもいかないしね。

私たちは子供じゃないから、それぞれの家のことを務めるのは当然で、いつも一緒に飲んだくれていられないのだと、諦めてもらわねば。


リラックスした姿勢で天井を仰ぐ彼は、「うーん」と唸ってなにかを考え中の様子。


「来週は火曜から四日間、出張なんだよな……」

「どこ行くの? 国内?」

「いや、中東。また夕羽ちゃんと離れ離れだ」


そう言って深いため息を漏らした彼が、一拍おいて突然勢いをつけて上体を起こすから、私は「わっ!」と驚きの声をあげた。

ガシッと両肩を掴まれて、体を彼の方に向けさせられる。

「な、なに?」と上擦る声で尋ねれば、「そうだ。夕羽ちゃんを連れていけばいいんだ!」と名案を閃いたかのように興奮気味に言われた。
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