溺愛ラブ・マリッジ~冷徹上司が豹変しました~
緊張が解けてほっとしながらも、残念に思っている自分がいる。

「焦る必要はない。
もしあれだったらカウンセリングを受けるという手もある」

「……はい」

今日も蔵人さんと結ばれなくて悲しくなってたら、髪を撫でてくれた。
蔵人さんに髪を撫でられるのは好きだ。
安心できるから。



梅雨が明けるとビール商戦は本番を迎え、一気に忙しくなる。

「オレもビアガーデンで飲みてー!」

愚痴を吐く尾上くんに苦笑いしかできない。
ここのところ私も残業続きだが蔵人さんの帰りはさらに遅い。
毎年夏の忙しさに加え、新規で大口の契約に携わっているから。

昼過ぎに一度、外回りから戻っていた蔵人さんはその後、会議室に行ったまま戻ってこない。
週明けには契約締結だから、いまが大詰めだ。
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