溺愛ラブ・マリッジ~冷徹上司が豹変しました~
冷たい銀縁眼鏡の奥から見つめる瞳からはなんの感情も窺えない。

……本当にいいんですか。

黙ってじっと見上げるが、なにも言わないあの人にはぁっと小さく心の中でため息をつく。

「もう時間ですか」

「ああ」

差し出された手に自分の手を載せて立ち上がる。
後戻りはもうできないのだ。


披露宴会場であるヨーロッパ風の邸宅に併設された、小さなチャペルで両家の家族だけに見守られて式を挙げる。

「では、誓いのキスを」

ベールをあげるとあの人の顔が近づいてくる。

目を閉じると唇が重なった。

けれど感動もなにもない。
まるでただの儀式のようだ。
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