溺愛ラブ・マリッジ～冷徹上司が豹変しました～

不安で不安で、窓を開けて真っ暗な外に大声で叫んでしまいたかった。

ソファーの隅で膝を抱えて座る私の前には、鳴らない電話。

意味もなく、付箋を貼り付けたノートのページを捲る。

“おいしかった”

“おいしかった”

“おいしかった。
鶏の甘辛く焼いた奴、また入れて欲しい”

“おいしかった”

“おいしかった。
和奏の甘い玉子焼きが一番好きだ”

眼鏡の描かれた付箋は私の幸せの象徴だった。
でもいまはそれを見ているだけで、心臓を直に握り潰されているかのように苦しい。


零時を過ぎ、ここのところ帰ってきていた時間になっても帰ってこない。
まだ接待中でどこかのお店にいるのだと無理に言い聞かせた。
それでも不安は少しも晴れない。