溺愛ラブ・マリッジ~冷徹上司が豹変しました~
最終章 君にだけ特別に甘いキスを
私が起きるとすでに蔵人さんはいなかった。

“おはよう。
もう行く。
遅刻だけはしないように”

残されたメモにいつもの眼鏡のイラストを見つけると、ぽろりと涙がこぼれ落ちる。

「蔵人さん、蔵人さん……」

床に座り込んでわんわん泣いた。

どうして私は蔵人さんを好きになってしまったのだろう。
どうして私は変わってしまったのだろう。

以前のように、なにも言えず、なにも決められず、人の顔色を窺うばかりの私だったら、ただ諦めるだけでこんなに悲しくならなかったのに。

涙が止まると大急ぎで支度をし、朝ごはんも食べずに家を出る。
こんな状況でも、遅刻して蔵人さんを失望させたくなかった。


会社に行くと打ち合わせブースから小雪の声が聞こえる。

「もう明日で蔵人とはまたお別れなのねー」
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