溺愛ラブ・マリッジ~冷徹上司が豹変しました~
蔵人さんと話しているところなど見たくもないのに、つい足を止めてしまう。

「……どうせすぐ、帰国するんだろ」

「まあね。
こっちでの仕事がしばらくメインになるし」

小雪が帰ってくるのなら、代わりの私なんてもう必要ない。
こちらから顔の見えない蔵人さんはきっと、喜んでいるのだろう。
心臓を握りつぶされたかのように、胸が苦しい。

私に気づいたのか、ちらりと小雪の視線が向かう。
一瞬だけ目があうと、口元だけで笑った。

「蔵人ー、昨日は最高だったわ。
やっぱり蔵人が一番気持ちいいー」

びくん、無意識に肩が跳ねる。

聞きたくない。
耳を塞いでしまいたい。

けれど聞かなかったところで事実がなくなるわけじゃない。

「会社でそんなことを言うな。
誰が聞いているかわからないだろ」
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